たくさんの施設に申し込んでいるのに、どこも断られて、受け入れてくれない……
- 親が脳梗塞で要介護認定を受けてしまった
- そろそろ退院しろと言われたけど、自宅へ受け入れるのは困難……
- まだリハビリを続けさせてあげたい、でもどんな施設や介護サービスを利用するのが一番いいの?
- こんな病気疾患でも、受け入れてくれる施設はあるのかしら……
そんなとき、最も利用しやすい施設が、老健です。
介護認定受けたばかりの方は、こちらもご覧ください。
老健施設(介護老人保健施設)は、要介護認定を受けた人であれば、誰でも入所できる施設です。
しかし、それぞれの事業所ごとに、入所させたい人、入所させたくない人がいることも事実です。
たとえば、
- こんな病気を持っている人は、入れない。
- こういう家族構成の人は、入れない。
- こんな薬を飲んでいる人は、入れない。
正確には入所できないわけではありませんが、
老健施設での介護が難しいと予想される場合は、なかなか入れません。
この記事では、老健施設に入りにくい高齢者の特徴を5つ、リストにしてみました。
1つでも当てはまるものがあれば、老健に入所するのは難しくなります。
不可能ではありませんが、
色んな施設(3つ以上)への入所申込をして一生懸命探す必要があります。
下記クリックで好きな項目に移動
老健相談員が絶対言わない、入所困難な高齢者の5つの特徴。
以下に5つ、挙げていきます。
老健施設の運営者側の立場で、入所させたくない人を考えてみました。
入所困難ケースその1.パーキンソン病
パーキンソン病の高齢者は、入所困難です。
理由は、入所中に転倒のリスクが高いこと。
高齢者は転倒すると、骨折しやすいです。
そして入院し、退院すると、身体機能が落ちてしまいます。
1度の転倒がきっかけで、車いすから抜け出せないこともしばしば。
老健施設で転倒して入院したのであれば、病院から退院指示が出た後も、施設側は、当然再受け入れしなければなりません。
それを拒否すれば、病院から信頼を失うからです。
「あんたの施設から受け入れたのに、再入所を拒否するとは何事だ!」と病院側は怒ります。
そうすると、「あの施設からの患者は次からは受け入れない」という態度を取られかねません。
だから、申し込み時点で入院の可能性が予想される高齢者については、老健も最初から受け入れたくないのです。
パーキンソン病(またはパーキンソン症候群)は、転倒リスクが非常に高い疾病です。
なので、入所を申し込んでも、断られる可能性が高いです。
また、パーキンソン病は薬価が非常に高いということも問題です。
(薬価の問題は後述します)
転倒リスクも薬価も高い。
パーキンソン病を持つ高齢者の老健施設入所はかなり困難です。
もちろん、パーキンソン病の高齢者を一切受け入れないというわけではありません。
しかし、あまり大勢受け入れることができないのも事実です。
転びそうな人を何十人も受け入れてたら、介護職員の体力と精神力が持たないという理由もあります。
入所困難ケースその2.緑内障等で目薬が3つ以上
緑内障の方は、受け入れ困難です。
「えー……」と意外に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、事実です。
緑内障そのものは、介護職員にとってそれほど介護困難ではありません。
ただし、「目薬を自分で点眼できない」「目薬が2種類以上ある」「1日に3回以上点眼する」場合、そんなに面倒見切れないという施設もあります。
介護職員は目薬をさせません。看護師が目薬をさすことになります。
しかし看護師は、とっても数が少ないので、目薬の管理はなかなか大変です。
薬の管理だけで、1日の大半を過ごしていると言っても過言ではありません。
なので、目薬を3つも4つもさしている方は、施設によっては受入困難と見なされます。
それに緑内障用の目薬は高価であることも、入所拒否の理由になります。
涙成分程度であれば、薬局で販売されているもので十分なのですが。
ちなみに老健施設の相談員は
「高い薬を飲んでいるから受け入れない」とは絶対言いません。印象が悪いからですね。
しかし現実問題として、受け入れを断る理由の半分以上は、これです。
言葉を選ばずに言えば
「あなたを受け入れても、うちは儲からないからお断りだよ」ということなのです。
入所困難ケースその3.家族が遠方
今度の場合は、薬価は関係ありません。
老健は、どんどん入退所の数を増やすことで、儲かる仕組みになっています。
(在宅復帰率が高い施設は介護保険の点数が増える)
新しい人を入れるには、長く入所している人に出て行ってもらわなければなりません。
老健施設は、有料老人ホームや特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(=サ高住)と違い、
ずっと入所できる施設ではありません。
おおむね3か月~1年をめどに、在宅復帰するか、別の施設へ移る必要があります。
そして、在宅復帰はもちろん、別施設の申し込みも、
家族が主体的に行動する必要があります。
最初に老健に入所したように、
家族(キーパーソン)が施設へ行って、見学・面談をして、申し込みをします。
現在入所中の施設の相談員は、次の施設の申し込みの代行などはやってくれません。(追い出したい利用者は別。)
ちなみに病院は、割とやってくれます。早く退院してもらいたいので。
したがって、老健側からすれば、連絡の取りやすい家族を受け入れたいと考えます。
遠方に住んでいて、月に1度来るか来ないかという家族では、
「退所してほしいのに、家族が全然動いてくれない」といった事態が起こります。
入所している方自体に罪はないのですが、「こげつき」などと不良債権みたいに言われます……。
老健施設が、新規利用希望者を病院から受け入れ検討するときは、病院の相談員や看護師に、色んな質問をします。
必ず聞くことの1つが、
「家族の方は、どれくらい面会に来られますか?」ということ。
ここで、「娘さんが遠いのに毎日いらっしゃいますよ。」
「すごく良さそうなご家族ですよ」
と伝われば、「遠くてもちゃんと来てくれそう」と印象を受けます。
これが「ご家族は、あんまり来ないですね。こちらが来てくれと言わないと」という答えだったら……?
同じ理由で、身よりがいない高齢者も、受け入れるには、施設側も少し勇気が必要です。
子どもがいなくてキーパーソンが甥・姪といった場合も、印象は悪いです。(近くに住んでいればOK)
なので、遠方が理由で断られる場合は、
キーパーソンの住んでいる地域の施設にも申し込むべきです。
「お父さん(お母さん)が長年暮らしてきた町のほうが良いから……」
と感じるのも、とってもわかりますけどね。
(本人自宅近隣&主介護者宅近隣、どちらも申し込みましょう。)
入所困難ケースその4.暴言・不眠など問題行動の伴う認知症
暴れる・夜に眠らないといった高齢者は、受入困難です。
理由は、施設の介護職員の負担になるからです。
「それが介護職の仕事ではないのか?」と思うかもしれませんが、そうでもありません。
家庭のようにマンツーマンで介護できるならばともかく、介護施設では少ないスタッフで大勢の高齢者を世話しています。
特に夜中など、2~3人の介護職員で「50人の高齢者」を見守らなければなりません。
仮にしょっちゅう暴れたり、夜中にずっと騒いでいる認知症の高齢者が1人入ると、その人に、多くの時間を割いてケアしなければなりません。
しかし時間は有限です。
1人に対するケアの時間が増えれば、その他何十人の高齢者のケアがおろそかになってしまいます。
それでも、
「それが介護職の仕事ではないのか?」と思う方は、想像してみてください。
あなたは夜中に暴れる高齢者をなだめています。
「家に帰る!」と言って、よろめきながらエレベーターを呼ぼうとしています。
転んだら事故。危ないので、そばを離れられません。
もう1人の職員は仮眠中です。
なだめている間にも、別の高齢者のナースコールが何人もびーびー鳴っています。
ナースコールが気になりながらも、転倒リスクがある暴れるおじいさんから目を離せない……
こんなジレンマを日々味わっているのが、介護職員。
精神的にも非常にツライと思いませんか?
あなたにできますか?
脱線しますが、個人的には介護職員の
「社会貢献度」「必要性」「労働負担(だれもやりたがらない)」
これを考えると、給料は月給50万くらいもらってもいいと思います。
実際は30歳台で「額面20万」いくかいかないか……。
「介護課長レベル」でも
- 基本給20数万円
- 職務手当3万円
- 役職手当5万円
- 資格手当1万円
こんなもんですかね。それでいて責任は、一般企業の課長の比ではありません。(他人の命を直接扱います)
ボーナス・賞与も、せいぜい年間2.0か月。大きいところだと4.5か月などあります。
とにかく、ひどすぎる実態です。
話がそれましたが、
「負担があまりにも大きい」という理由で、
問題行動がある高齢者は、施設側としては受け入れたくないのです。
具体的には、家族や病院のナースに暴言を吐いたり、介護拒否がある場合は、入所困難の可能性が高いです。
相談員も、キーパーソンとの面談の時に、認知症や問題行動の具合は必ず聞いてきます。
それほど重要なことなのです。
とはいえ、家族がそういう問題行動があることを隠すのは、やめたほうがいいと思います。
入所させてみて「家族が言っていた話と全然違う」ということになれば、
1,2か月で追い出され、その施設では二度と受入してもらえません。
嘘をついて介護施設の利用をしていても、段々と利用できる施設が少なくなっていきます。
最終的に「どこも受け入れてくれない」という状況にもなりかねません。
介護施設同士も、近隣で「注意すべき利用者」みたいなのは共有しています。
もちろん、直接的にリストを共有しているわけではありません。
しかし普段から色々と情報交換しているので、何となくお互いにニュアンスが伝わるのです。
だから嘘ついていたり、家族が不誠実な態度をとっていると、あっという間に行き場所がなくなります。(ホントですよ。)
特に介護施設は、家族と施設との信頼関係が成り立っていないと、お互いに嫌な思いしかしません。
そのとき、一番ツライのは誰でしょう?
当の要介護者がいちばんかわいそうですよね。
家族としては、相談員に正直に打ち明けて、
それでも受け入れてくれる施設を何とか見つけましょう。必ずあります。
「ちょっと条件厳しいけど、家族は良い人そうだなあ、何とか利用受入させてあげたいなあ……」
こういう印象を、相談員に与えるように努力する。
これが家族にできる「スムーズな受け入れ・入所」を実現するための、一番いい方法です。
入所困難ケースその5.高価な薬を飲んでいる
パーキンソン病や緑内障のところでも話しましたが、薬価の高い要介護者は受入困難です。
「高い」って具体的にいくらなのかと言いますと、およそ「月に1万円以上」は高いと判定されます。
計算方法は、例えば以下のサイトで、現在処方されている薬を検索してください。
何を飲んでいるかは、お薬手帳や、病院からの処方箋を参照してください。
たとえば神経系の痛み止めである「リリカカプセル25mg」を処方されているとしましょう。パーキンソン病で処方されたりします。
上記のサイトで「リリカカプセル25mg」を調べると、薬価67.8と書いてあります。これは1錠あたりの単価。
これを、1日何回、何錠飲んでいるかで計算します。
たとえば1日2回、1錠ずつ飲んでいるとすれば、1か月で60錠。
60錠×30日で180錠。(このあたり適当なので鵜呑みにしないでくださいね。)
単価67.8×180=12,204円です。
1つの薬だけで、1万2千円などとかかっていると、ほかにいくつも薬を飲んでいるでしょうから、老健では受入が難しいんですね。
ちなみにリリカは一発アウト級の薬です。リリカ飲んでいる限りまず受入不可能といったレベルの薬価です。
あるいは、糖尿病の患者さんも、お薬代が上がりがち。
受け入れが難しいことが多いです。
軽い症状であれば、それほど問題はありません。
しかし、高価な薬を飲んでいると、入所困難。
インスリンが必要な場合は、99.9%入所不可です。
そのときの理由は「HBA1Cが高すぎて、状態が不安定なので……」
などと説明を受けるでしょう。
相談員さんも、「薬が高いからお断り」とは絶対言いません。
(たまに面談の時に、「じつは薬価が高いと入所は難しいんですよね・・・」と正直言うタイプの相談員もいます。どちらが誠実なのか、難しいところです。)
糖尿病は気をつけないといけません。
この記事を読んでいるあなたは、きっとご家族に要介護者がいらっしゃるのかと思います。
あなた自身も、健康には気を付けなければいけない年齢だと存じます。
ぜひ、糖尿病をはじめとする生活習慣病だけには、気を付けてください。
パーキンソン病はどうしようもありませんが、生活習慣病は、かなり予防できます。
当サイトでは、ダイエットの食事法について、色々と書いています。
その中でも、糖質制限の食事法については、かなり詳しく書きました。
たとえば、こちらの記事をご覧いただければ、
「糖質制限食」の内容について分かりやすく書いています。
(関連記事)生活習慣病・寝たきり予防には、糖質制限食がおすすめです
↑ちょっと硬い説明が多くて、読みにくいかもしれません。
また、この記事でも別の記事でも、ページ末尾にコメント欄があります。
こちらに、何かご質問を頂ければ、わかる範囲でお答えいたします。
何でも結構です。どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。
補足:どうして薬価が高いと受入困難なのか
これは介護保険制度の問題があります。
かんたんに言うと、老健入所者のお薬代は、老健施設の負担になります。
在宅高齢者は、処方薬を1割もしくは3割負担で受け取れますが、入所すると、老健が10割払います。
そのため、薬をたくさん飲んでいる人、高い薬を飲んでいる人を受け入れると、老健側の利益が減るのです。
要介護度3で薬価5千円の利用者と、要介護度3で薬価2万円の利用者がいるとしましょう。
そうすると、1か月で1万5千円、老健側の利益が減るわけです。
1万5千円自体は大した額ではありません。
塵も積もれば山となるということで、施設もできるだけ塵を積みたくないのです。
100人受け入れて、1人につき1万円利益差が出れば、月100万です。
介護職員5人分(!)の月給です。(給料安すぎ……)
こうした理由で、薬価の高い薬を飲んでいる要介護者は、入所が難しいのです。
まとめ 老健入所を考えるなら処方薬をチェックしよう
老健相談員が絶対言わない、入所困難者5つの特徴ということでお話ししました。
相談員は特に「薬価」については話してくれません。
「利益が少ないから受け入れない」と言ってしまうと、施設の印象が悪くなるからです。
もちろん介護施設も慈善事業ではなく、利益追求・営利企業です。
なので、そこは利用希望者も理解しなければいけないところです。
もし、「たくさんの施設に申し込んでいるのに、どこも断られて、受け入れてくれない」
という困った事態に遭遇した場合は、
まず処方薬の薬価を調べてみることをおすすめします。
1か月に1万円を超えている場合は、
かかりつけのお医者さんに相談してみるといいかもしれません。
「老健施設に入所させたいけど、薬価が高いから断られる。何とか薬を調整できないでしょうか?」と。
反応は医師によって異なりますが、もしかしたら処方薬を見直してくれるかもしれませんよ。